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主人の憂鬱。
 部屋の隅っこの方で、珍しく眠りについた彼を見つけた。
 ソファーに座れば良いのに、床に腰をついて堂々と眠っている。
 最初に出会ったとき。私は名乗ったのに、この男は失礼極まりなく名乗ることなどしな
かった。
 だから私から「貴方、名前は?」と尋ねたのだったと思う。
 そしたら彼は<<ギア=フリークス>>と答えた。たったそれだけの答えに、彼は逡巡する
ように数秒の時間を要した。おまけに、自分でもよくわからない――そう付け足して。
 私はそれがどうしても可笑しくて笑ってしまった。記憶を失っているとかならまだしも。
 大のおとなが――私から見れば誰だって大人みたいなモノだけれど――自分の名前がわ
からないってどうなの? 仮にも英雄ですよ?
 おまけに彼が名前を答えたとき、僅かに困ったような表情をしたのだ。
 その時――失礼ながらもこう思ってしまった。
 可愛い、と。
 だが実際彼は、ちっとも可愛くなどなかった。
 私の言うことなんて全然聞いてくれないし。
 「それが仕事だろう!」と彼を何度叱りつけても聞く耳なし。
 これは人選ミスかもしれないと何度も後悔したものだ。
 本来、今だって彼が眠っているのはただの惰眠と言えた。彼らに睡眠など必要ないんだから。
 主人である私としては叩き起こす権利、否――怠慢な従者を起こす義務があるとさえ思える。
 だが眠っているといっても彼は仮にも狂戦士。
 怒って飛び掛ってこられたら私など一溜まりもないだろう。
 だから額に“肉”程度で勘弁してやろう。
 ここは人間の出来てる私だから許してあげてるわけであって!
 感謝しなさいよ! べ、別に貴方が恐いわけじゃないんだからねっ!
 そう思うことにした。思うことにしなければやってられない。
 おっかなびっくり――じゃなくて、優雅な足取りで水性ペンを棚から取り出してきて。
 きゅぽん、とまぬけな音をさせて水性ペンのフタを取る。
 水性ってところがまた、自分の小ささを表していて嫌になるな・・・・・・。
 彼が目を覚まさないか、ヒヤヒヤしつつ。
 ゆっくりとペンを片手に彼の額に伸ばす。
 彼は、例えるなら野獣。狼だ。だとしたら私は赤頭巾ちゃん?
 自分で思って、またそれが可笑しくなってニヤニヤ笑ってしまった。

「ああ、バカみたいだ・・・・・・私」

 結局――彼の額に“肉”と書く作戦は失敗に終わった。
 彼が途中で目を覚ましたわけじゃない。
 彼は眠る獣。
 だから――見ていて、とても、愛おしくなってしまった。
 眠る彼の表情はとても穏やかだった。
 すぅすぅと寝息を立てる彼は紛れもなくどうしようもなく、いつもの恐い彼が醸し出す
雰囲気など皆無で無防備だった。

「英雄はどんな夢を見るのかしら、ね」

 彼のいつも外さない眼鏡をこっそり手に取って、掛けてみたりする。
 予想では物凄い度が入っているのかと思ってたのに、伊達だった。新たな発見だ。
 だったら、どうして邪魔な眼鏡など掛けているのだろう?

「何をしているんだ、マスター」

「みぎゃぁぁ!」

 突然起きた彼にびっくりして、思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。
 なんて失態・・・・・・。
 コイツの眼の前ではいつも落ち着いて優雅に振舞おうって決めていたのに。
 っていうか何、何でコイツ突然目を覚ましてるの!

「起きるときくらい起きるって言ってから起きなさいよ!」

 うあん――支離滅裂だ泥沼だぁ。

「フム――難しい課題だなそれはまた。とりあえず、起きたぞマスター」

 珍しく彼にしては殊勝な返事だった。

「なんだマスター。目まで、悪くなってきたのか」

「そ、そうよ! だったら貴方の眼鏡ちっとも度が入ってないじゃない!」

 たとえ目が悪かろうが、私の場合魔力で視力を補強すれば良いだけの話であって。
 彼もそう気付いただろう。
 私は悔しさと恥ずかしさでいっぱいになり、掛けている眼鏡を外して力いっぱい握りしめる。
 彼は何も言わなかった。
 ただ私が今にも握りつぶしてしまいそうな眼鏡を、物憂げに見つめていた。
 まるで何か大切なモノを見ているように。

「っ〜〜〜! 何よ、何か言いなさいよ!」

「何でもない――私はもう一度寝るぞ、マスター」

「あ、待てこのヤロウ!」

 私の制止を押しきり、彼はまた目を瞑った。
 もう、寝てるし!
 どこでも眠れる、すぐ眠れるというのは才能だ。私なんてなかなか寝付けやしないし、
ときどき夢にうなされてすぐに目が覚めてしまうのに。
 全く、この男はワケがわからない。理解できない。
 英雄を理解するなんて、凡人の私には無理なのだろう。

「えい」

 私はどっかりと、彼の横に腰を下ろした。
 もう良いや、今日は。寝よう。
 彼の白衣、その胸ポケットに眼鏡を返してやる。

「きっと、私には言えないような大切な物なんでしょうね」

 肩越しに感じられる彼の体温は温かかった。さすがケダモノだ。
 冷え切った氷のような私でさえ、溶けてしまうんじゃないかとさえ思えた。
 私の心の中にある氷山が、溶けてしまうんじゃないか。

「――どこか、壊れちゃったのかなぁ」

 彼に出会って、私は私のことまで理解できなくなった。
 誰にも触れることなく生きてきた私は、私のことだけは理解していると思っていたのに。
 今の私は、まるで恋する乙女のようだ――。
 そんなバカな思いを廻らせながら。
 私は深いまどろみの中に落ちていく。



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 本邦初公開の小説版、サティ譲の素顔。あとギアの寝顔。
 前髪が揃った大人びた少女でも彼の前では素直になれないの! って・・・。
 あの彼女っぽいですね・・・(汗。
 でもこんな性格だったかなぁサティ。
 こうかいてると・・・続きとかアフターとかif祭とか・・・かきたくなってくる・・・。
 時間が欲しいとです。
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